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熊田浩弥さん特別寄稿「VSで経費減と省力化を実現」

VSで経費減と省力化を実現
コメどころ山形・庄内平野から

 

VSを使い始めたのは2015年の春、田植え後の水田の還元状態「ワキ」が気になり、地元農協で営農指導をしていた仲間に相談すると、抑制できると聞いたからだった。半信半疑で、「こがね液」を直まきの餅米の水田20㌃に規定量を直接投入した。しばらくするとワキは収まり、秋の収量も上々だった。2年目も順調で効果を実感したが、3年目には一転して収量減に陥った。4年目になると、芽を出した稲が根を切られ倒れるような状態が確認され、計1町2反歩の収量はゼロ。頭を抱えた。

例年より早く始まった田植え準備=2019年3月

土を掘り起こすと、中から出てきたのは、キリウジガガンボやケラ、ヨトウ…。
「微生物の力で土壌が変化すると、土壌の中の虫も活動が活発化するのではないか」。そんな疑問が浮かんだ。それから殺虫剤の散布の時期を巡って試行錯誤を繰り返した結果、代掻き後ではなく耕起の時にまいてみると、被害はピタッと収まった。

コメと大豆の一作ローテで好循環

田植えが一段落したら大豆畑の耕起=2020年5月

一方で、全滅した水田での稲作は気が重く、試しに大豆をまいてみると、生育も収量も目を見張るほどだった。葉は大きく茎も太く、根の張りもいい。同じ品種なのに他の生産者の畑との違いは、遠くから見ても一目瞭然。「肥料ゼロなんて言って、本当は隠れて肥料を振っているんだろう」と疑われたりもした。豪雨で畑が浸水した年も全滅せずに収穫が出来て、根が健全な作物の生命力を見せつけられた思いだった。

稲穂があぜ道につくほど豊かな実り=2021年9月

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大豆を収穫した畑で、翌年はコメを作付けする一作ローテーションは、こうして始まった。VSの力もあって肥料をやらなくても大豆は生育し、反収は約200~300㌔前後を維持している。前年に残った稲ワラもきれいに分解されているのか、稲作でワキの発生はなくなった。真夏も青々として、シャキッとした稲姿は惚れ惚れするほどで、稲作の反収は600㌔を軽く超える。VSの土作りに取り組む仲間が1人、また1人と加わり、現在は6人まで増えてチーム化している。

自然の力に戻すのがVSを使った土作り

VSは経費削減型農業そのものと話す熊田浩弥さん

VSを使って気付いたのは、従来のコメ作りは、過剰な窒素を与えて丈を伸ばしたり、茎を増やしたりしていたのではないかということ。たくさん肥料を振っても、吸収する根が生育しなければ、肥料を無駄に捨てているようなものだ。右も左もわからずに、仲間たち頭をひねりながら、懲りずに使いづけてきた成果が、少しずつ形になってきていると思う。

ウクライナ危機などによる肥料価格の高騰や近年の異常気象などで、農家経営を取り巻く状況は厳しさを増している。それでも、右肩上がりの経営にしていくには経費や労力を削減するしかない。人間が土を作るなんて、えらそうなことを言わず、VSの微生物の力を借りて自然に逆らわない農業をしていくだけだ。土壌の中の状態や変化は目には見えにくいし、数値化も難しいが、化学肥料を全く使わないで収量を確保していること、何よりも気持ちのゆとりが出てきたことが答えだととらえている。これが完成形というものはなく、仲間たちと力を合わせて課題を一つ一つクリアしていきながら、これからも取り組んでいくつもりだ。

 

葉がみずみずしくてパリッとして甘いキャベツ=2022年7月

 

 

 

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